フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき
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目次 amazon ページより
プロローグ 『フランス革命の省察』から学ぶもの
第一章 フランス革命と名誉革命の違い
第二章 過去を全否定してはいけない
第三章 人間はどこまで平等か
第四章 革命派の暴挙を批判する
第五章 教会は大事にすべきだ
第六章 フランスに革命は不要だった
第七章 貴族と聖職者を擁護する
第八章 改革はゆっくりやるほうが良い
第九章 メチャクチャな新体制
第十章 社会秩序が根底から崩れる
第十一章 武力支配と財政破綻
終章 フランス革命が残した教訓
概要説明 amazonより
1789年7月に勃発したフランス革命は、以後のあらゆる革命の基本になった。社会主義はもちろん、いまの日本の「改革」志向も、すべてこの革命に通じている。だが、その真実は何だったのか「保守主義の父」と呼ばれる著者、エドマンド・バークが喝破したのは、革命による混乱が生じた国家で、急進主義的な改革を推し進めようとすれば、その国の事態は日を追って収拾がつかなくなる、ということだった。挙げ句の果てに、その政府は人々が唖然とするような「トンデモ政策」を打ち出さざるをえなくなる。まさに、2011年の民主党政権の有り様と同じではないか!本書は、バークの思想の現代性を読み取った訳者・佐藤健志氏が、フランス革命が進行するさなかに書かれた名著をバージョンアップしてよみがえらせたものである。
原著「フランス革命の省察」は、フランス革命勃発の1年後の1790年にロンドンで刊行された。
刊行当時はベストセラーになったものの、高い評価は得ていない
原著者のエドマンド・バークは、フランス革命はひどいものだと批判している
革命が発生してすぐに、「この革命は後に失敗に終わるだろう」と見通していた
軍人による独裁が行われることを的確に当てた
利害対立の関係があるからこそ、どんな決定も熟慮に基づき、妥協されて穏やかな変化になる
すんなり着地した議論は危険サイン
保守のための漸進的変化の考え方がベースにあると感じた
オルテガと似た思想なのかと思った
名誉革命とフランス革命の性質は違う
バークは、流血沙汰を避けた名誉革命を高く評価している
名誉革命では、世襲による王位継承の伝統は守られた
この制度までひっくり返していたら、破滅的な危機になっていただろうと予測している
「現にうまく機能していない箇所」のみを変えることとする保守的精神が大事である
フランス革命は、「自由であること」を「傍若無人に振る舞うこと」と勘違いしてしまっている
革命はほんとうに最後の手段
国家には保守と継承の精神が必要
p65
「革新」に憧れる精神とは、たいがい身勝手で近視眼的なものである。おのれの祖先を振り返ろうといない者が、子孫のことまで考えに入れるはずがない。
自由や権利は、祖先が努力してうまくやってきたからこそ、現在の自分たちまで継承されてきている
現代人は先祖から見たら全員フリーライダーであり、過去を全否定できる立場ではない
生まれた時点で誰しもが「強くてニューゲーム」の機会を得ている時代
現時点からまた新たにニューゲームを開始すると、今までうまく動いていた伝統(引き継ぎ要素)まで失ってしまう
p85
優れた者の地位を引き下げることで達成できる平等などないのだ。
新たに権力を得たものによって支配階層が作られる
尊敬に値するような人々の地位まで引き下げてしまうと、私利私欲にまみれた愚者が権力を得てしまう
しかし、著者の言うように、あまりにも伝統重視・保守的にしすぎると、権力の腐敗が起きてしまうのが辛いところ
権力者が腐敗し甘い汁を日々吸っている状態で社会が停滞していると、甘い汁を吸えていない人々が反感を持つ
奴隷じゃない人たちは、奴隷の人たちの気持ちが分からない
奴隷の人たちが反乱を起こして社会を混乱に巻き込んだ時に、支配層は「社会を壊した奴隷はけしからん!」と指摘するだろうが、奴隷の立場からしたら「奴隷が許されている社会がけしからん!」なので、社会を壊すことにインセンティブが働く
フランス革命のような出来事がそもそも起きないように予防することが大事
フランス革命は、治療より予防のほうがいいが、治療のほうが目立ってしまうの例に見える
格差を縮小して革命家の発生を抑える
少しずつ保守的に社会を改善していくことが重要なのだと啓発する
オルテガが提唱しているような保守のための漸進的変化
2022年、格差拡大社会が問題になってきているので、危険な徴候
インターネットメディアの発達によって共感格差という新たな格差の登場
ロシア・ウクライナ危機にみる、国の格差がうむ地球的革命の危機
国が滅びるんだったらいっそ核兵器で地球ごと壊してしまおうという思想の革命起きてしまわない?という心配
第五章 教会は大事にすべきだ
は、教会や宗教を身近に感じていない自分には共感しづらい内容だったkidooom.icon
ディドロの百科全書がフランス革命に影響を与えた
知識人がカルト的な合理主義になり、教会や宗教への攻撃を強めた
知識人と金融勢力が結託し、貴族や王族を倒す革命勢力を強くした
第八章 改革はゆっくりやるほうが良い
この章が印象強い
ここで批判されているフランス革命と、カルト集団の本質は「一発逆転」です。は似ているものだなと感じた。
p196-197から抜粋
すべてを変えるのは無能の証拠
従来のシステムの過ちや弊害は、誰の目にもハッキリと移るため、たいした頭がなくとも容易に批判できる。
前例のないことを試すのは、じつは気楽なのだ。うまくいっているかどうかを計る基準がないのだから、問題点を指摘されたところで「これはこういうものなんだ」と開き直ればすむではないか
対照的なのが、システムを維持しつつ、同時に改革を進めてゆくやり方である。
ここでは大いに知恵を働かせなければならない。システムの各側面について忍耐強く気を配り、比較力や総合力、さらには応用力を駆使して、従来の要素と新しい要素をどう組み合わせたらいいか決めることが求められるのだ。
p198
健康を害したからといって、やみくもに特効薬を探し求めるばかりで、毎日の食生活については改善しないのと似ている。
慢性の病気は、生活習慣を改めることで少しずつ治す。革命政府にはこの常識がない。
革命は、はじめからやり直したい症候群の政府バージョン
大きなシステムであればあるほど、はじめからやり直すのは、それまでの試行錯誤や経験、ノウハウが失われ、さらなる悪い結果をもたらしかねない。
「最初からこうしておけば良かった!」は本当にそうかどうか疑わしい
今のシステムの悪いところや不満はほぼ誰でも言える。批判するだけはとても簡単。
バークは、一発逆転を狙うのでなく、〈スモールステップでできることを少しずつ着実に増やす〉という戦略を取るを支持している。
フランス革命後に革命派が作った投票条件への批判
投票するには、3日分の労働報酬に相当する金額を収めるのが条件だった
手厚く保護すべき財産を持たない人から投票券を取り上げる行為である
人権の平等性をうたう革命派の矛盾を指摘
新貨幣アッシニアの失敗
貨幣を刷りまくって価値がどんどん下がっていく
納税は金・銀で行わせ、給料など政府からの支払いにはアッシニア貨幣を使う
金銀は価値が上がり、アッシニアは価値が下がっていく詐欺まがいのシステム
p307
「自由な政府」を作る難しさ
自由には道徳が不可欠なのだ。頭が空っぽのくせに「自由、自由」と叫びたがる連中は不愉快きまわりない。思い上がりもいい加減にしろと言いたくなる。
道徳の無い自由は、破壊や略奪も許してしまう